私は結構な頻度で”細かい”って言われる。 たぶん、自分でもわかってる。そういう性格なんだ。
何かを始めるとき、私はいつもイメージトレーニングをする。 成功のイメージだけじゃない。『もしこうなったら?』『ああなったら?』と、頭の中で何通りもパターンを作る。 そしてその一つひとつに対して『それならこうする』と答えを見つけていく。 そうしないと、なんとなく動き出すのが怖いから。
でも、そんな私が、ぶんを抱っこした日は――
なんだか、全然ちがった。
テレビで、猫を抱っこしてる家族が映っていた。 お母さんの膝の上で、まんまるになってる猫。 お母さんは、猫の背中をそっとなでていた。
それを見てたら、なんとなく――本当に、なんとなくだけど、 『今なら、できるかも』って思った。
ぶんはいつものように、クッションの上でごろりん。 私はそっと近づいて、少しだけ手を伸ばしてみた。
『ぶん……ちょっと、いい?』
すると、ぶんは一瞬だけこちらを見て、 そのまま動かずに、じっとしていた。
それは、ぶんの――「いいよ」の合図。
そーっと、腕を入れて、体を支えて、 ぎこちなく、でもやさしく、抱き上げる。
……できた。
ぶんを、だっこできた。
思ったより、軽くて、あったかくて。 どきどきして、でもうれしくて。 なにより、ぶんが逃げなかったことが、ただただ奇跡みたいだった。
そのまましばらく、ぶんはおとなしく膝の上にいて、 ときどき喉をころころ鳴らした。
『……ぶん、ありがとね』
しあわせすぎて、調子に乗った私は、 次に、はなにも挑戦してみたくなった。
『はなも、できたりして?』
そーっと近づいて、同じように腕を差し出して。
はなも、意外と素直に抱っこされた。 『えっ、いけるじゃん?』なんて思った、その瞬間。
「シャッ」
突然、バタバタっと暴れて―― 顔に猫パンチ。しかも、爪付きで。
『うおっ……!』
見事に逃げられました。笑
はなはちょっと離れたところから、じっとこちらを見て、 「なにすんのよ」とでも言いたげな顔。
『……ごめん。調子のったわ』
私の頬にはうっすらひっかき傷。 でも、なんだろう。 その痛みすらも、ちょっとだけ、うれしかった。
だって今日は、ぶんが、だっこを許してくれた日だから。
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