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短編小説

【ふたりといた時間】第8話:お気に入りの窓辺

朝、バタバタと身支度をしている私の背中を、ふたりは見ていない。……というより、朝のバタバタしている私に、ふたりは全く興味がない。ぶんは朝4時からの巡回で力尽き、押入れの奥で爆睡中。はなはというと、ひとしきり甘えて満足したのか、こたつの掛け布...
短編小説

【ふたりといた時間】第7話:おそろいの首輪

あの日、たしか買い物ついでに寄ったホームセンターだった。おやつコーナーの隣に、ひっそり並んでいたペットグッズ。何気なく手に取ったのは、ピンクとグレーの小さな首輪だった。『おそろいにしたら、可愛いかもな…』レジに向かうときには、もうそのふたつ...
温泉と自然

【散歩日記】西福寺、何もないのに、すべてある場所

お昼ごろ。空は青く晴れていたけれど、湿気がすごかった。空気がぬるりと肌にまとわりついてきて、思わず「暑っ…」と声が漏れる。でも今日は、どうしても行きたかった。無性に――西福寺の空間に、もう一度浸りたかったのだ目的は御礼参り。でも、きっとそれ...
短編小説

【ふたりといた時間】第6話:ねこの夢薬(ゆめぐすり)

『ただいまー……あれ?』玄関を開けた瞬間、ちょこんと座っていたのは――はなだった。目をこすりながら、まだ夢の中にいるような顔で、ふわっとこちらを見上げる。『寝てたでしょ?w』はなは小さくあくびをして、あとは無言でしっぽだけふるふる。そのまま...