ごはんと喫茶

グリーンハウスのカレー

去年のはなし。なぜだったのか、今でもうまく説明できないけれど、人の少ない場所へ行きたい衝動に駆られていた私。誰にも会わず、静かな場所で過ごしたかった。そこで、思い浮かんだのが杉野沢方面。車を走らせながら、少しずつ街の景色が遠ざかっていく…。...
神社・温泉と散歩道

夜の善光寺を歩く

私にとって善光寺は、少し気分転換がしたくなった時に歩く場所である。何か特別なことがなくとも、ただ、歩きに行く場所。善光寺ファンの方からしたらとても贅沢な行事かもしれない。不思議とあの場所の空気を感じたくなるのだ。いつもそんな気持ちに背中を押...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】最終話:「ふたりに教えてもらったこと」

はなとぶんが旅立ってから、どれくらいの時間が流れただろう。季節は何度も巡った。暑い夏も、寒い冬も過ぎていった。だけど——私は1日たりとも、ふたりを忘れたことがない。断言できる。朝、目が覚めたとき。仕事へ向かうとき。ごはんを食べるとき。眠る前...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第47話:夢の中で再会する日

1度だけ。1度だけ2人が夢に出てきてくれたことがある…玄関ドアの向こうから、カサッ、と音がした。まるで、誰かが小さな足で走ってきたような音。——ぶん?そう思って目を向けると、そこにいた。玄関マットの上で、しっぽをふりふりしながら、私を見上げ...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第46話:腕の中で眠るように

私はそっと、ぶんを抱き上げた。痩せた身体は、まるで羽のように軽かった。それでも、確かに生きている温もりが腕の中にあった。ぶんの呼吸が、少しずつ浅くなっていった。腕の中で右に、左にと動かしていた体が、やがて止まり小さな胸が、かすかに上下するの...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第45話:もがく体、でも声はない

ぶんは、落ち着く場所を探すように、押し入れやテント、こたつの中へと、あちこちを移動していた。今思えば、それは小さな身体で必死に「少しでも楽な場所」を探していたのだろう。ある朝、目を覚ましてぶんを探した。『ぶん、どこだ?』部屋の中を見回しても...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第44話:最後に飲んだ水

お風呂の蛇口から、ぬるま湯がとろとろと落ちていく音。ぶんは、その水が好きだった。冷たすぎず、熱すぎず。ちょうどよくあたたかく、少し鉄分の味がするそのお湯を、ぶんはよく飲んでいた。その日。もしかしたら、ぶんが水を飲むかもしれない——そんな小さ...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第43話:ぶんの、がんばり

テントの奥で、ぶんはじっと丸くなっていた。何度も声をかけたけれど、返事はなかった。「ぶん。点滴の時間だよ。……楽になるから」そう言っても、ぶんは動かない。目を閉じたまま、気配だけがそこにある。私と離れてから、ぶんは少しずつ食べなくなった。食...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第42話:ぶんの静かな日々

ぶんのいない朝。家の中は、いっそう静かだった。ソファに毛玉は落ちていない。押し入れを開けても、ぬくもりはどこにも残っていなかった。——そこに、はなもぶんはいないのだと、改めて思い知らされる。私は、週に1度、ぶんのいる亜希子さんの家へ通うよう...
ふたりといた時間

【ふたりといた時間】第41話:離れても、そばに

ぶんは、あれからもずっと、静かだった。いつものようにソファで丸くなり、押入れにこもって昼寝をし、ごはんの時間には「にゃあ」と小さな声で私を呼んだ。ぶんとふたりの暮らしにも、少しずつリズムが生まれていた。確かに“ひとり”になったはずなのに、そ...