【ふたりといた時間】第47話:夢の中で再会する日

はなとぶんの時間

1度だけ。1度だけ2人が夢に出てきてくれたことがある…

玄関ドアの向こうから、カサッ、と音がした。
まるで、誰かが小さな足で走ってきたような音。

——ぶん?

そう思って目を向けると、そこにいた。

玄関マットの上で、しっぽをふりふりしながら、私を見上げるぶん。
あの頃と同じように、口を少し開けて、声にならない声で何かを言っている。
「かまって」「なでて」って、そんな風に言っているように見えた。

家に上がると、ぶんは足元にすり寄ってきた。
ガッツリと頭を押しつけて、すりすりと頬を寄せてくる。
その感触。あたたかくて、懐かしい。
——こんなにも、ちゃんと感じるのに。

『ぶん……会いたかったよ。』
そう言うと、ぶんは私の手のひらをペロリとひと舐めし、満足そうに目を細めた。

そのとき、階段の上のほうから視線を感じた。
見上げると、そこにいたのは——はな。
階段の端から、こっそり顔だけのぞかせている。
少しむくれたような顔で。

『はな』
名前を呼ぶと、ふいっと目をそらした。
その瞬間、ぶんが階段を駆け上がろうとする。
『こら、ぶん!』と声をかけるより早く、はながぶんに向かって小さく「シャーッ」と怒る。
でも、それもほんの一瞬だった。

次の瞬間、ぶんは階段の途中で立ち止まり、はなの頭をぺろりとなめた。
はなは、まんざらでもない顔をしながらも、しつこいぶんにしっぽの先をちょん、と当てた。

——ああ、これだ。
これが、いつものふたり。

私はその光景をただ見つめていた。
懐かしくて、愛しくて、息が詰まりそうになる。
『会えた、やっと会えたね……はな、ぶん』
気づけば、言葉がこぼれていた。

その瞬間、ふたりの姿が少しずつ薄れていく。
光の粒のようになって、空気の中に溶けていく。

『待って……もう少しだけ……』

手を伸ばしたけれど、指先は空を切った。

——目が覚めた。

部屋の中は静かだった。
窓の外から、朝の光が静かに差し込んでいる。
頬を伝う涙の跡をそっと指でぬぐった。

夢だったのか、それとも——。

ふと足元を見ると、床の上に白い毛が一筋。
ぶんのものか、はなのものかはわからない。
でも、それを指先でつまんだ瞬間、胸の奥がじんと熱くなった。

あの感触。あの気配。
きっと、会いに来てくれたんだ。
——そう思いたかった。

私は目を閉じて、そっとつぶやく。

『ありがとうね、はな。ありがとうね、ぶん。
さあ……おいし〜の、食べようか。』

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