【ふたりといた時間】第23話:毛づくろいの順番、わたしは最後

はなとぶんの時間

猫って、毛づくろいをするときの“タイミング”があるらしい。
おなかいっぱいになったときとか、気持ちを落ち着けたいときとか。
それから、なにか“整えたい”ときにもするんだって。

はなとぶんを見ていると、たしかにそんな気がする。

ごはんを食べて満足したあと。
ひととおり遊びも終えて、ふたりがそばにいるとき——

「ぺろっ……ぺろぺろっ……」

はなが、ぶんの頭を舐めはじめる。

ぶんは目を細めて、ちょっとだけ首をかしげながら、
「そこそこ、そこ舐めて〜」って言ってるみたいな顔。

——と思ったら。

今度はぶんが、はなのおしりのあたりに顔をぐいっと近づけて、
……えっ、そこ!?
……まさかの、舐め返し。

『それ、イヤじゃないの……?』

そう思って見ていると、
ふたりともなんとなーく我慢してるような顔をしてる。
そして、度がすぎると、取っ組み合いのケンカ。笑

順番が逆になることもあるけれど、
頭とおしり。おしりと頭。
どっちもセットでお手入れするのが、ふたりのルールらしい。

いやいや、ちょっと待って。
さっきまでケンカしてたじゃん?
追いかけっこして、「シャーッ!」ってやってたじゃん?

でも、その数分後には毛づくろいしてる。

『……仲直りの儀式なの?』

って思っちゃうくらい、すんなり切り替えて、
まるで何もなかったみたいにペロペロし合ってる。

(猫って、すごいなあ)

そんなふたりのあいだに、
ごくたま〜に、私もまぜてもらえることがある。

たとえば、ぶんが膝に乗ってくつろいでるとき。
はなが、すーっと寄ってきて、私の顔をじーっと見て……

「……んぺっ」

鼻と鼻が、ちょっとだけ触れたあと、
ちいさな舌が、ぺろっと一回。

え? 今、なめた? 私の鼻、なめたよね??
って、ちょっと固まる私。
でも、もう、はなはそっぽ向いて、毛づくろい再開してる。

——照れ隠し?
それとも、「ついで」……?

でも、そんなちいさな“ぺろり”が、たまらなくうれしい。

『……今、認められた気がする』

そんな気分になる。

ぶんも、ときどき。
鼻先をそっと近づけてきて、
「ちょん」と鼻を合わせてくれることがある。

舐めるってほどじゃないけど、
それはたぶん、ぶん流の「わかってるよ」のサイン。

猫の世界にちょっとだけ混ざれたような気がして、
心の中で、こっそりガッツポーズしてた。

ふたりの毛づくろいには、ちゃんと順番がある。
はながぶんを、ぶんがはなを。

——そして最後に、ときどき、私。

だから、今日も願ってる。

『次は、わたしの番かな?』

ってねw。

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