【ふたりといた時間】第24話:すねるのも、愛のうち?

はなとぶんの時間

はなは、居心地のいい場所を見つける天才だった。

押入れの奥、日だまりの窓辺、ソファのひじ掛けの上……
『こんなところにいたの?』って思うような場所に、ぴたっとはまっている。

でもその“お気に入りスポット”は、なぜかいつも、後からぶんに取られてしまう。

あの日もそうだった。

はながのそのそと、こたつの中に入っていくのを、ぶんはじっと見ていた。
しばらくしてから、さも“たまたま通りかかっただけですよ”みたいな顔でふらっとやってきて、
何食わぬ顔で、するっとこたつに潜り込んだ。

数秒後——

「……ぴょこん」

とこたつから顔を出したのは、明らかに不満げなはな。

こたつの中をのぞいてみると、
ど真ん中でぶんが、のび〜っとお腹を出して寝ている。

『ぶーん……はなの場所、取っちゃダメでしょ?』

そう言うと、ぶんはちょっとバツの悪そうな顔で、ちらっとこっちを見る。

怒られるのは、だいたいぶん。

だって、後から来てるんだもん。
だって、はなが先にいたんだもん。

でも、ぶんにはぶんなりの言い分もあるらしくて。
私がちょっと強めに『ダメだよ』って言うと——

「……ぴゅっ」

って音がしそうな勢いで、押入れに駆け込んでしまう。

そしてそのまま、出てこない。

拗ねてる。完全に。

でも、その気持ち……なんかちょっと分かるんだよね。

なぜって? 私も子どもの頃、押入れにこもってたから。笑

ほんのり狭くて、ほんのり静かな押入れの奥。
そこでふて寝するぶんの背中は、ちょっと丸くて、ちょっと寂しげで、
「悪気はなかったんだよ」って言ってるみたいだった。

一方、はなはというと、
「ふんっ」って感じで、今度はテーブルの上を陣取っている。

……こっちも怒ってる。完全に。

場所を取られて、すねてる。完全に。

——でも不思議なのは、そうやってお互い「ぷんすか」してたはずなのに、
ふと気づくと、こたつの中でふたり、並んで寝ていたりすること。

え? 仲直りしたの?
いつ? どういうタイミングで?
話し合いでもしたの??

もちろん、そんなわけはないんだけど。

たぶん、ふたりの間には“言葉”じゃない、
もっとふわっとした「やさしい間合い」があって、
それでなんとなく、許し合えるんだろうなと思う。

怒って、すねて、離れて。
でもまた近づいて、ぺたんと寄り添う。

その繰り返しが、きっと「一緒に生きてる」ってことなんだ。

だから私は今日も、どちらかがすねたら、
ちょっとだけ気づかないふりをして、そっとしておく。

そして、ふたりがまた近づいているのを見つけたら、
心の中で、こっそり拍手するのだ。

『よかったね、仲直りできたね』って。

すねるのも、きっと愛のうち。
そして、仲直りは、愛のかたち。

今日もこたつの中には、ふたりの“ちょうどいい距離感”が眠っている。

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