【ふたりといた時間】第27話:食べてるのに、不安になる

はなとぶんの時間

はなは、今日もカリカリを元気に食べていた。
おいしーのの袋を開ける音にも、いつものように反応する。
小走りに駆けてきて、お皿の前でおすわりして、
まるで「早くちょーだい」と言っているみたいに尻尾をふる。

食いしん坊なのは、ずっと変わらない。
カリカリも、おいしーのも、ペロリと平らげる。

——でも。

なんだろう、この感じ。
ちゃんと食べてるのに、どこか心がざわつく。

 

最近、はなが吐くことが増えてきた。
食べすぎてゲーッと吐いちゃうのは、昔からよくあることだったけれど——
なんとなく、それとは違う気がした。

『あれ? また?』

そう思って拭き取りながら、
ほんの小さな違和感が、少しずつ積もっていく。

吐いたあともけろっとしてるし、
食欲が落ちてるわけじゃない。
でも……やっぱり、どこかおかしい気がする。

うまく言葉にはできなくて、
私はただ、『気のせいかな』と自分に言い聞かせるしかなかった。

 

そんなある日のことだった。

はなが突然、叫ぶような声を上げた。
今まで聞いたことのない、苦しそうな、大きな声。

『はな!?』

あわてて駆け寄ると、はながその場にうずくまっていた。
右後ろの足が、明らかに変だった。
動かそうとしても動かないみたいで、
床を前足でひっかくようにしながら、鳴き続けていた。

ぶんは、すぐそばにいた。
何が起きたのか分からないまま、じっとはなを見つめている。

——はなのあんな顔、初めて見た。

ぶんの目にも、確かに「心配」が映っていた。
どうしたらいいのか分からない、でも目を逸らさずに見守る、
そんなぶんのまなざし。

私は急いで、亜希子さんに電話をかけた。

『右足が……なんか、変なんです……! 動かなくて……声も……』

うまく言葉にできないまま、それでも必死に伝えようとする私に、
亜希子さんは落ち着いた声で応えてくれた。

「大きな病院、紹介するね。ちゃんと詳しく診てもらおう」

 

その後、はなは少し落ち着いたようで、押し入れの奥に入っていった。
私は、何度ものぞき込んでは名前を呼んだ。

スフィンクス座りのまま、じっとしている。
目を閉じて、痛みをやり過ごすかのように見える。

『大丈夫だよ。今から、病院行こうね』

そう声をかけると、はながそっと目を開けた。
まるで、すべてを分かっているかのように——
あるいは、「任せたよ」とでも言うように。

カリカリも食べた。
おいしーのにも、ちゃんと反応した。

でも私はもう、『食べてるから大丈夫』とは思えなかった。

——食べてるのに、不安になる。

それは、ただの違和感じゃない。
もうきっと、始まっているんだ。

何かが、静かに。

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