はなは、今日もカリカリを元気に食べていた。
おいしーのの袋を開ける音にも、いつものように反応する。
小走りに駆けてきて、お皿の前でおすわりして、
まるで「早くちょーだい」と言っているみたいに尻尾をふる。
食いしん坊なのは、ずっと変わらない。
カリカリも、おいしーのも、ペロリと平らげる。
——でも。
なんだろう、この感じ。
ちゃんと食べてるのに、どこか心がざわつく。
最近、はなが吐くことが増えてきた。
食べすぎてゲーッと吐いちゃうのは、昔からよくあることだったけれど——
なんとなく、それとは違う気がした。
『あれ? また?』
そう思って拭き取りながら、
ほんの小さな違和感が、少しずつ積もっていく。
吐いたあともけろっとしてるし、
食欲が落ちてるわけじゃない。
でも……やっぱり、どこかおかしい気がする。
うまく言葉にはできなくて、
私はただ、『気のせいかな』と自分に言い聞かせるしかなかった。
そんなある日のことだった。
はなが突然、叫ぶような声を上げた。
今まで聞いたことのない、苦しそうな、大きな声。
『はな!?』
あわてて駆け寄ると、はながその場にうずくまっていた。
右後ろの足が、明らかに変だった。
動かそうとしても動かないみたいで、
床を前足でひっかくようにしながら、鳴き続けていた。
ぶんは、すぐそばにいた。
何が起きたのか分からないまま、じっとはなを見つめている。
——はなのあんな顔、初めて見た。
ぶんの目にも、確かに「心配」が映っていた。
どうしたらいいのか分からない、でも目を逸らさずに見守る、
そんなぶんのまなざし。
私は急いで、亜希子さんに電話をかけた。
『右足が……なんか、変なんです……! 動かなくて……声も……』
うまく言葉にできないまま、それでも必死に伝えようとする私に、
亜希子さんは落ち着いた声で応えてくれた。
「大きな病院、紹介するね。ちゃんと詳しく診てもらおう」
その後、はなは少し落ち着いたようで、押し入れの奥に入っていった。
私は、何度ものぞき込んでは名前を呼んだ。
スフィンクス座りのまま、じっとしている。
目を閉じて、痛みをやり過ごすかのように見える。
『大丈夫だよ。今から、病院行こうね』
そう声をかけると、はながそっと目を開けた。
まるで、すべてを分かっているかのように——
あるいは、「任せたよ」とでも言うように。
カリカリも食べた。
おいしーのにも、ちゃんと反応した。
でも私はもう、『食べてるから大丈夫』とは思えなかった。
——食べてるのに、不安になる。
それは、ただの違和感じゃない。
もうきっと、始まっているんだ。
何かが、静かに。

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