病院で診てもらい、”点滴で様子を見ていきましょう”という言葉に、正直ホッとした。
重たい不安のかたまりが、少しだけ軽くなったような気がしたからだ。
だけど——
それでも、心のどこかはざわついたままだった。
“大丈夫ですよ”と先生は言ってくれた。
でも、私の中に残ったのは、「大丈夫」という言葉の重さだった。
どれくらい、大丈夫なのか。
いつまで、大丈夫なのか。
その“大丈夫”の中に、「治る」という希望はあるのか。
そして私は、どうしたらいいんだろう——。
点滴を始めてから、はなは見違えるほど元気になった。
月に一度、亜希子さんに来てもらって点滴を打ってもらう。
はなは最初の頃、針を刺されるたびに必死に抵抗していたけれど、
少しずつ慣れてきたのか、じっと我慢して受けてくれるようになった。
そして数時間もしないうちに、
はなはふわっと軽くなったように、部屋の中を歩き出す。
よく食べて、よく寝て、
ぶんと一緒に、また部屋を走り回るようになった。
ああ、また『いつものはな』だ——
それはうれしくて、でも、どこか切なかった。
私が夜遅くまで残業して帰ってきても、
玄関を開けると、はなとぶんが並んで待っている。
ぶんは眠そうな目で、ちょこんと座っていて、
はなはその後ろから目をこすりながら、ゆっくり歩いてくる。
どんなに具合が悪くても、
一生懸命に玄関まで迎えに来てくれる。
その姿に、胸がきゅうっと締めつけられる。
『ただいま、はな』
そう言いながら、私はただ、頭をなでるしかできなかった。
悩んだ末に、私はひとつの答えを出した。
——治すことはできなくても、
せっかく人間と暮らしているのだから、
はなができるだけ、苦しくならないようにしたい。
“最後まで、楽に生きる”を。
無理に病院へ通わせたり、検査を重ねたりはしない。
はなが”いつもの毎日”を送れるように、
その時間を、できる限りそばで支えること。
そして、どこまでも寄り添うこと。
それが、私なりのはなとの向き合い方だ。
「大丈夫」と言われても、不安がゼロになることはない。
だけど、はなが笑っていてくれたら——
その一瞬一瞬が、「大丈夫」にしてくれる気がした。

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