こたつの中から、かすかに聞こえる寝息。
ふたりの丸い背中が、寄り添うように並んでいる。
いつの間にか、寝る場所は3人一緒になっていた。
はなが好きな猫用のソファは、こたつの中に入れてある。
いつも愛用していたひざ掛けも、そっと敷いた。
夜、はながトイレや水を飲みに起きるとき、なるべくストレスにならないように、
部屋のすみずみまで整えた。
ごはん、水、トイレ——すべてが、はなの「一歩」で済むように。
でも、それだけが理由だったんだろうか?
ぶんは寂しがりやだから、私たちがいるこたつに来ているのかもしれない。
だけど——本当に、それだけかな……。
こたつの中を、私はふと、のぞいてみた。
するとそこにあったのは、言葉にならない光景だった。
はなと、ぶん。
ふたりが、目を合わせていた。
灯りのない、こたつの静けさの中で。
お互いの存在を確かめるように、じっと、見つめ合っていた。
何も鳴かない。
動きもしない。
ただ、そっと、目だけが合っていた。
胸の奥が、きゅうっと締めつけられた。
まるで、これからのことを話し合っているみたいだった。
あるいは、「ここにいるよ」と伝え合っているような——
そんな、静かな夜のまなざし。
私はそっと、何も言わずに毛布に顔をうずめた。
だって、もう分かっていたから。
ぶんも、私も。
はなのことが、愛おしくてたまらない。
だけど、できることは限られている。
だからこそ、一緒にいる。
少しでも長く、少しでもそばで。
ぬくもりを、静けさを、心の中の「大丈夫」を、そっと分け合うように。
『はな、ありがとうね』
『ぶんも、いてくれてありがとう』
心の中でそうつぶやいて、私は目を閉じた。
今夜もまた、こたつの中の小さな世界に、3人の呼吸が重なっていく。
ずっと、ずっと、一緒にいたい。
それは、願いじゃなくて、いまここにある日常。
何気なくて、でも、かけがえのない——
ふたりの目が合った、あの夜のことを、私達はきっと忘れない。

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