【ふたりといた時間】第40話:ぶん、ひとりになる

はなとぶんの時間

はながいなくなって、今日で何日が過ぎただろう。
部屋の空気は変わらないのに、胸の奥にぽっかりと、穴が空いたような気がしていた。

でも——
ぶんは、まるで何も変わらなかった。

いつも通りに目を覚まし、ごはんを食べて、毛づくろいをして、
私のところに甘えてきて、そしてまた、眠る。

そんなふうに、淡々と、毎日を過ごしていた。

はなの不在に戸惑う様子は……なかった。
いや、私が『そうであってほしい』と思いたかっただけかもしれない。

思い返すと、はなが体調を崩してからの私は、
ぶんにほとんど構ってあげられていなかった。

そのことが今になって、じわじわと胸を締めつける。

ぶんは、何も言わない。
でも、もしかしたら本当は——
はなに負けないくらい、寂しかったのかもしれない。

私はその思いが拭えず、仕事以外では外出を控えるようになった。
ぶんがひとりで過ごす時間を、少しでも減らしたくて。
——いや、それ以上に、私自身が「ひとり」になるのが怖かったのかもしれない。

そんな私の気持ちをよそに、ぶんは気ままに、家の中を歩き回っている。
そして、ふと気づく。

今まで、はながいた場所に——ぶんが、いる。

お気に入りだったソファの背もたれの上。
こたつの中の、あたたかい布団の端。
猫テントの中も、押入れの猫ベッドも。
全部が、いつの間にか「ぶんの居場所」になっていた。

はながいた頃は、譲り合っていた空間。
いや、正確には、はなが譲ってくれていた空間だったのかもしれない。

そこを今、ぶんは、まるでちょっとした冒険でもするように、満足そうに巡っている。

私はその姿を見て、思わずふっと笑った。

『ぶん、全部自分の場所になったんだね』

ぶんは甘えるときも、遠慮がなくなった。
いつの間にか、私の膝にぴょんと飛び乗ってきて、
「にゃ〜ん」と小さく鳴く。
頭をこすりつけて、鼻先を私の鼻にそっと押し当ててくる。
そして、喉をゴロゴロと鳴らしながら、気持ちよさそうに丸くなる。

そんな顔を見ていたら——私は少しだけ、安心した。

『そうか。大丈夫そうだな、ぶん』

そう声をかけると、ぶんはちょこんと首を傾げ、
そのまま私の膝の上で、目を閉じた。

『……はな?』

思わず、ぽつりとそう呟いた。

『そっか。はなは、いないんだったね』

静かな部屋。
少しだけ広く感じる空間。
そこに寄り添ってくれる、ぶん。

——ぶんは、ちゃんと前を向いている。
すこしずつ「ひとり」になって、すこしずつ、私と向き合ってくれている。

それが、ぶんなりの答えなんだろう。

私はぶんの背中に、そっと手を添えた。
ゆっくりと撫でるたびに、あたたかさが指先に伝わってくる。

そのぬくもりが、「だいじょうぶ」と語りかけてくれている気がした。

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