【ふたりといた時間】第22話:午後のにゃんこタイム

はなとぶんの時間

お昼すぎ。
少し遅めのお昼ごはんを終えて、
ふぅ、と一息ついたころ。

ふと、部屋の空気がゆっくりとやわらかくなっていくのを感じる。

『……静かだなあ』

そんなときはたいてい、
ふたりがそれぞれの“お昼寝スポット”に収まっている。

はなは、押し入れ。
お気に入りの布団のすき間に、器用に体をねじこんで、
まるで「最初からここに入るために作られた空間ですけど?」という顔をして寝ている。

ぶんは、ソファの上。
もしくは、テントの中。
季節や気分によって微妙に使い分けてるところが、ぶんらしい。

わたしはそのまま、そーっとソファに腰をおろして、
あたたかい飲み物を一口。

そして、耳をすます。

「ぴー……ぴー……」

……あ、聞こえる。はなのいびき。

はなのいびきは、なんというか、ちょっと鼻が鳴ってるような音。
おもちゃのピーピーって音に似てるから、初めて聞いたときはびっくりした。
『鳴いてるの?』って思ったくらい。

でも、そのすぐあとに、ぶんのいびきも聞こえてくる。

「すー……すー……」

こっちはやさしい音。
赤ちゃんみたいな寝息で、まるで穏やかな風が吹いてるみたい。

ふたりのいびきが、重なったり、ずれたり。
まるで即興の子守唄みたいで、
そのリズムに合わせて、こっちまで眠くなってしまう。

『……寝ちゃおっかな』

なんてつぶやいて、
ごろんと横になった午後。

はなのいる押し入れは、ちょっと遠いけど、
ぶんのいるテントとは近いから、こっそりそばに転がってみる。
するとぶんは一瞬、うす目をあけてこちらを見るけれど……

「ん、まあいっか」

みたいな顔をして、また目を閉じる。

これが逆にはなだったら、
「なに?」って顔して、ぐいっと背を向けて奥に入っていっちゃうから、おもしろい。

それぞれに、それぞれの「午後」がある。
でも、ぜんぶがひとつの空間の中にある。
わたしも、そのまんなかで目を閉じる。

ふたりと過ごす、
なんてことのない、でも何よりあたたかい午後。

——この時間がずっと続けばいいのに、って。
そんなふうに思う日が、何度もあった。

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