早朝、お風呂グッズとお弁当をバッグに詰めて、
勢いよく志賀高原ルートを車でぐんぐん走った。
カーブの連続を気持ちよく抜けながら、
『やっぱりここを走るの、好きだな』と思う。
バイクも多かった。
ロードバイクの人もいたけど、あの急坂はきっとしんどい。
それでも――楽しいんだろうな。そんな顔をしていた。
私はというと、そう目的地は草津。
草津国際スキー場のそばの無料駐車場に車を止めて、
『温泉に入ろう』と思っていた。
でも、湯に浸かる前に、ちょっとだけ汗をかいておきたくて。
気がつけば、無心で歩きはじめた。
草津の街を歩くのは、久しぶりだった。
草津国際スキー場は、いままさに工事の真っ最中。
(こんなに大々的にやってたんだ)
そう思いながら歩いていると、斜め前に見覚えのあるリゾートホテルが現れた。
……あれ? あそこ、自分が働いていたホテルじゃないか。
なんだか、急に昔の記憶が押し寄せてきた。
通っていた道。支配人ご用達の店「ハッピー」。
足早に通り過ぎた朝。
草津に住んでいた頃のことを、静かに思い出す。
風はやわらかく、木の匂いが鼻をくすぐった。
山の鳥の声。温泉の硫黄の香りも、どこかに漂っている。
やっぱりここは、温泉地なんだなと思う。
なんとなく歩いていたら、いつの間にか白根神社に
あくまで“汗をかくための散歩”のつもりだった。
だけど、森林に包まれた神社までの道は、ただのウォーキングじゃ済まなかった。
静けさ。木々の揺れ。湿った苔の香り。空気の密度――
そんなものに包まれているうちに、すっかり心が満たされていた。
そういえば、あの頃、一度もお参りに来た記憶がない。
でも今こうして、生きて、元気で歩けている。
「ありがとう」って、伝えたくなった。
湯畑にも立ち寄って、少しだけ観光気分。
写真を撮って、また静かに歩き出した。
草津温泉街を歩いてみて思った
湯畑周辺もすっかり変わっていて、通っていたお気に入りの店ももうなかった。
未来って、本当にわからないものだ。
変わっていく街。変わっていく建物。
でもその中で、思い出だけは静かに息をしていた。
そして、ふと気づく。
……汗だくだったのに。
……草津温泉に来たのに。
結局、温泉には入らずに帰ってしまった。
もったいない、って思う?
でも今日はなんだか、白根神社で心がじゅうぶん温まった気がしたんだ。
あの頃の自分を、そっと見つめ直す時間だったのかもしれない。
アクセス
・住所:〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町草津401
・営業時間:24時間
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