温泉と自然

【散歩日記】西福寺、何もないのに、すべてある場所

お昼ごろ。空は青く晴れていたけれど、湿気がすごかった。空気がぬるりと肌にまとわりついてきて、思わず「暑っ…」と声が漏れる。でも今日は、どうしても行きたかった。無性に――西福寺の空間に、もう一度浸りたかったのだ目的は御礼参り。でも、きっとそれ...
短編小説

【ふたりといた時間】第6話:ねこの夢薬(ゆめぐすり)

『ただいまー……あれ?』玄関を開けた瞬間、ちょこんと座っていたのは――はなだった。目をこすりながら、まだ夢の中にいるような顔で、ふわっとこちらを見上げる。『寝てたでしょ?w』はなは小さくあくびをして、あとは無言でしっぽだけふるふる。そのまま...
温泉と自然

【散歩日記】草津温泉より、思い出にあたたまる日と白根神社

早朝、お風呂グッズとお弁当をバッグに詰めて、勢いよく志賀高原ルートを車でぐんぐん走った。カーブの連続を気持ちよく抜けながら、『やっぱりここを走るの、好きだな』と思う。バイクも多かった。ロードバイクの人もいたけど、あの急坂はきっとしんどい。そ...
短編小説

【ふたりといた時間】第5話:ぶん、心を開くまで

『ん……』布団の中、まぶたの裏にやわらかな光を感じながら、私はごそっと身をよじる。まだ眠っていたい気持ちと、ほんのり感じる“気配”とがせめぎあってる——そんな休日の朝。すると。「ぺしっ」……え? 今の、何?もう一度まぶたを閉じようとした、そ...
グルメ

【カフェランチ】North South East Westの真ん中で

「梅雨入りしたのに…晴れてるw」車を降りると、じりっと焼けるような日差し。思わず顔をしかめたけど、日焼け止めを塗っておいたのは正解だったな、ってひとり頷いた。今日は、まさかの“上司とカフェ”。出勤前にぽつりと、「気分転換にどう?」なんて言わ...
短編小説

【ふたりといた時間】第4話:ごはん戦争、はなの巻

『ただいま……』その声が、私の一日の終わりの合図になったのは、いつからだっただろう。仕事は相変わらず慌ただしくて、あれやこれやと気を張る毎日。上手くいってるとはいえ、疲れはじわじわと体に染みついて、帰宅する頃にはヘロヘロで。靴を脱ぐだけでも...
温泉と自然

【散歩日記】八海山尊神社に呼ばれた日

『よし、行こう』朝起きてそうつぶやいたのは、誰に向けた言葉でもなかった。お昼すぎ、曇り空の下。梅雨入りしたばかりのこの時期は、ジメジメと湿気がまとわりついて、この間までの過ごしやすさが恋しくなるような日だった。ほんの数日前——ふっと、頭の中...
短編小説

【ふたりといた時間】第3話:ふたり、それぞれの性格

玄関の鍵を回す。かちゃり、という音が響くと――「にゃーっ!」ドアが開くよりも先に、あの声が聞こえる。おかえり、って言ってるのか。それとも、ただ遊びたいだけなのか…。いや、たぶん両方。靴を脱ぐ間もなく、足元にとことこ駆け寄ってくるちいさな影。...
温泉と自然

【散歩日記】昭和の森公園で森を歩くって、やっぱりいい

『ちょっと歩いてこようかな』朝9時ごろ、曇り空。じっとりとした湿気が肌にまとわりついて、虫まで汗に吸い寄せられてくるようで、正直あまり快適とは言えなかった。でも、なんとなく…そう、なんとなく気分転換がしたかった。気持ちが落ちているときって、...
短編小説

【ふたりといた時間】第2話: はな?ぶん?はじめまして。

今思えば——あの頃の私は、ちょっとした人生の転機の中にいたのかもしれない。新しい仕事を始める直前で、期待と不安がごちゃ混ぜになってて。落ち着かない日々が続いてた。なんていうか……心の中がザワザワしてて、そこに風を通したいような、そんな気分。...