【ふたりといた時間】第13話:ふたりのやらかし日記

短編小説

留守番中のふたりが、今日もまた、何かしらやってくれていた。

仕事から帰ってきて、玄関の扉を開けた瞬間、ふんわり漂う――
どこか湿ったような、嫌な予感のする香り。

『あれ……?』

リビングに入って、まず気づいたのは――

クッションが、ひとつ、妙にふわっと浮いている。

近づくと、うっすら湿って、しっとり。

『ぶん……またやったな』

私の声に反応したのか、私の足元からチラリとバツの悪そうに覗く黒いお顔。
でもどこか堂々としている、ぶんw。

後から調べてわかったけれど、
猫って、ストレスを感じると、クッションや布団におしっこしちゃうことがあるらしい。

『さみしかった?』

聞いたって答えないけれど、ちょっとだけ胸がちくりとする。

……でも、事件はそれだけじゃなかった。

テーブルの上に置いていった、コンビニのおにぎり。(※…私が悪い😭)
帰ってきたら――

『……海苔だけない』

ビニールも中身もそのままなのに、
海苔だけが、きれいさっぱり消えていた。

犯猫は……間違いなく、はな。

『はな、好きだもんね。海苔』

はなは知らん顔で、窓辺でひなたぼっこ。
しっぽをくるりと巻いて、優雅にまどろむ。

でも、ラップに小さな歯形がひとつ。
証拠は、しっかり残っていた。

さて、極めつけは――

押入れの戸。

帰ってきたとき、ほんの少しだけ、開いていた。
そっと開けてみると……ベリッ。

『ええっ……!』

ふすまが片方だけ外れかけていて、
中には、ふたりがいたと思しき痕跡。

畳にはうっすらと、ひっかき傷。
戸の端には、小さなガシガシ跡。

どうやら、入りたくて、何度も何度も戸をガシガシして、
ついには、こじ開けたらしい。

そして次の瞬間――

『にゃーにゃーにゃー!』

私の足元で、ふたり揃って鳴きじゃくる。
「おいしーの!」「おいしーのちょうだい!」とでも言いたげにw。

『……はぁ。まったく、ふたりとも』

思わずため息が出るけれど、
でも、なんだかんだ、今日もちゃんとふたりでお留守番してくれていたんだなぁ……と。

私は気づけば、クスッと笑っていた。

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