短編小説

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【ふたりといた時間】第14話:はなの“たっちゃーん”とよぶ日

朝ごはんを食べ終えて、ひなたぼっこして、窓の外の鳥をしばらく眺めたら――ふたりの中で、なんとなく「食後の甘えん坊タイム」が始まる時間になる。私がソファに座ると、ぶんがゆっくり歩いてきて、私の足元で丸くなる。そのすぐ後を追うように、はながやっ...
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【ふたりといた時間】第13話:ふたりのやらかし日記

留守番中のふたりが、今日もまた、何かしらやってくれていた。仕事から帰ってきて、玄関の扉を開けた瞬間、ふんわり漂う――どこか湿ったような、嫌な予感のする香り。『あれ……?』リビングに入って、まず気づいたのは――クッションが、ひとつ、妙にふわっ...
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【ふたりといた時間】第12話:ぶんと掃除機の仁義なき戦い

引っ越して、まだ間もない朝のことだった。はなとぶんは朝ごはんを食べ、窓辺でひなたぼっこ。お気に入りのルーティンを終え、ふたりしてまったりくつろいでいた、そのとき。私は、そっと壁に立てかけてあった――掃除機を取り出した。カチッ。スイッチを入れ...
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【ふたりといた時間】第11話:引っ越し大作戦、始まる!

『なんか…最近、狭くない?』🟩第2章:にぎやかな毎日(11~25話)フッとつぶやいたその声に、応えるように視線を上げたのは――ソファとベッドをしれっと占領している、ふたりの猫だった。はなはベッドのど真ん中で、きれいに丸くなって寝ている。ぶん...
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【ふたりといた時間】第10話:やっと、家族になった日

朝から、心に決めていた。今日はもう、絶対に外に出ない。誰とも会いたくないし、何もしたくない。仕事の疲れも、気疲れも、全部ブランケットにくるんでしまいたい。『ソファから一歩も動かない』っていう、ちょっとした宣言みたいなもの。それが今日の予定表...
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【ふたりといた時間】第9話:だっこはまだ、ちょっとこわい

ぶんが初めてこの家にきた日のことを、思い出していた。押入れの奥、布団に半分うずもれるようにして、じっと身を固くしていた。あの時のぶんは、どこか「近づいてくるな」と言いたげで——私はただ静かに、息をひそめるしかなかった。けれど今ならわかる。あ...
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【ふたりといた時間】第8話:お気に入りの窓辺

朝、バタバタと身支度をしている私の背中を、ふたりは見ていない。……というより、朝のバタバタしている私に、ふたりは全く興味がない。ぶんは朝4時からの巡回で力尽き、押入れの奥で爆睡中。はなはというと、ひとしきり甘えて満足したのか、こたつの掛け布...
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【ふたりといた時間】第7話:おそろいの首輪

あの日、たしか買い物ついでに寄ったホームセンターだった。おやつコーナーの隣に、ひっそり並んでいたペットグッズ。何気なく手に取ったのは、ピンクとグレーの小さな首輪だった。『おそろいにしたら、可愛いかもな…』レジに向かうときには、もうそのふたつ...
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【ふたりといた時間】第6話:ねこの夢薬(ゆめぐすり)

『ただいまー……あれ?』玄関を開けた瞬間、ちょこんと座っていたのは――はなだった。目をこすりながら、まだ夢の中にいるような顔で、ふわっとこちらを見上げる。『寝てたでしょ?w』はなは小さくあくびをして、あとは無言でしっぽだけふるふる。そのまま...
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【ふたりといた時間】第5話:ぶん、心を開くまで

『ん……』布団の中、まぶたの裏にやわらかな光を感じながら、私はごそっと身をよじる。まだ眠っていたい気持ちと、ほんのり感じる“気配”とがせめぎあってる——そんな休日の朝。すると。「ぺしっ」……え? 今の、何?もう一度まぶたを閉じようとした、そ...