短編小説

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【ふたりといた時間】第21話:にゃんこ通訳、はじめました

名前を呼ぶと、返事が返ってくる——そんな日が来るなんて、思ってもみなかった。『はな〜』『ぶん〜』そう呼ぶと、それぞれがちゃんと、自分の名前に反応して顔を出すようになった。呼ばれていない方は、耳だけぴくっと動かして、そのまま寝ていたりする。な...
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【ふたりといた時間】第20話:ふたりだけのお留守番

年に、2〜3回ほど。ほんの短い間だけど、家を空けることがある。ちょっとした旅行——そんなとき、はなとぶんは、ふたりだけでお留守番だ。出発の支度をしていると、はなとぶんはなんとなく気配を察する。いつもなら寝ている時間なのに、どこか落ち着かない...
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【ふたりといた時間】第19話:夜中の大運動会

あたりは真っ暗。カーテン越しに、街灯のオレンジ色がぼんやりと差し込んでいる。時計を見れば、深夜1時。静かすぎる夜——のはずだった。……ドドドドド!どこかで何かが転がる音。続いて、「ウォーン!」という軽めの鳴き声。『……やってるな』はなとぶん...
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【ふたりといた時間】第18話:またたび食べて酔っ払い事件

またたびをあげてみようと思ったのは、ある日ふと読んだ本に"猫のストレス解消になる"と書いてあったから。仕事で家を空けることが多い私は、ふたりに寂しい思いをさせているかもしれないと、ずっとどこかで気にしていた。せめて、ほんの少しでも気晴らしに...
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【ふたりといた時間】第17話:はじめてのお風呂、兄弟の絆

はなとぶんをお風呂に入れるというのは、もう戦場だ。リビングで捕まえようとすると、するりと転がって逃げるはな。 そういえば引っ越しの車中で、キャリーケースの中で「にゃあぁぁっ!」と大げさに鳴いて、大変な抗議の嵐だったっけw。——まずは、はなか...
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【ふたりといた時間】第16話:段ボール城と毛だらけ王国

秋の気配が、部屋の隅っこにまで染み込んできたころ。我が家では、季節の変わり目ならではの——小さな騒動が起きていた。リビングの一角に、ひとつの段ボール。引っ越しのときに使ったそれが、なぜかずっと居座っている。ほんとはもう、とっくに片付けてるは...
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【ふたりといた時間】第15話:ついにぶんの抱っこデビュー

私は結構な頻度で"細かい"って言われる。 たぶん、自分でもわかってる。そういう性格なんだ。何かを始めるとき、私はいつもイメージトレーニングをする。 成功のイメージだけじゃない。『もしこうなったら?』『ああなったら?』と、頭の中で何通りもパタ...
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【ふたりといた時間】第14話:はなの“たっちゃーん”とよぶ日

朝ごはんを食べ終えて、ひなたぼっこして、窓の外の鳥をしばらく眺めたら――ふたりの中で、なんとなく「食後の甘えん坊タイム」が始まる時間になる。私がソファに座ると、ぶんがゆっくり歩いてきて、私の足元で丸くなる。そのすぐ後を追うように、はながやっ...
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【ふたりといた時間】第13話:ふたりのやらかし日記

留守番中のふたりが、今日もまた、何かしらやってくれていた。仕事から帰ってきて、玄関の扉を開けた瞬間、ふんわり漂う――どこか湿ったような、嫌な予感のする香り。『あれ……?』リビングに入って、まず気づいたのは――クッションが、ひとつ、妙にふわっ...
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【ふたりといた時間】第12話:ぶんと掃除機の仁義なき戦い

引っ越して、まだ間もない朝のことだった。はなとぶんは朝ごはんを食べ、窓辺でひなたぼっこ。お気に入りのルーティンを終え、ふたりしてまったりくつろいでいた、そのとき。私は、そっと壁に立てかけてあった――掃除機を取り出した。カチッ。スイッチを入れ...