はなとぶんの時間

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【ふたりといた時間】第35話:ふたりの目が合った夜

こたつの中から、かすかに聞こえる寝息。ふたりの丸い背中が、寄り添うように並んでいる。いつの間にか、寝る場所は3人一緒になっていた。はなが好きな猫用のソファは、こたつの中に入れてある。いつも愛用していたひざ掛けも、そっと敷いた。夜、はながトイ...
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【ふたりといた時間】第34話:手の中の命の重み

はなは、もう、今までみたいには歩けなくなってきた。ゆっくりなら歩ける。だけど、すぐに座り込んでしまう。ふらついて、転んでしまうこともある。ほんの少しの移動も、きっと今のはなには冒険だ。だから私は、ある日、そっとはなを抱き上げた。『ちょっと、...
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【ふたりといた時間】第33話:知らないふりがつらい

はなは、今日も「元気だよ」って顔で寄ってくる。ぶんもそのあとを追いかけてくる。まるでいつも通りの朝が、何の変哲もなく始まっていくみたいに。——でも、私は知っている。はなの呼吸が、朝方に少し苦しそうになること。寝ている時間が、前よりずっと長く...
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【ふたりといた時間】第32話:ぶんの声が遠く感じた日

夜、ふと目が覚めた。それは、どこか遠くから聞こえるような、ぶんの鳴き声だった。——いつもの巡回。毎晩、相変わらずぶんは家の中をぐるっと歩きながら、「んあお〜ん」と狼みたいに鳴く。まるで家全体に「見守ってるよ」と言っているみたいに。でも、その...
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【ふたりといた時間】第31話:呼吸の速度が早くなる

はなが、ごはんのあとに「ゲ〜」とする回数が増えてきた。前までは、たまに食べすぎて吐くくらいだった。でも最近は、食べてすぐに吐いてしまう。カリカリでも、おいしーのでも、関係なく。『また、出ちゃったね』優しく拭き取りながら、心の奥にじんわりと何...
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【ふたりといた時間】第30話:大丈夫と言えた夜

「長くはないかもしれない」亜希子さんが、はなとぶんを託してくれたとき、はなについてそう言ったのを、ふと思い出した。まさか、その言葉をこんな場面で思い出すなんて……。命の尊さを、まさかこんなかたちで理解するなんて——。その言葉がふいに脳裏をよ...
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【ふたりといた時間】第29話:「大丈夫」と言われても

病院で診てもらい、"点滴で様子を見ていきましょう"という言葉に、正直ホッとした。重たい不安のかたまりが、少しだけ軽くなったような気がしたからだ。だけど——それでも、心のどこかはざわついたままだった。"大丈夫ですよ"と先生は言ってくれた。でも...
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【ふたりといた時間】第28話:はじめての病院

車での移動なんて、はなとぶんにとっては引っ越し以来の大冒険だ。人間でいえば、満員電車で遠くの町へ旅するくらいの出来事かもしれない。はなとぶんは、ふたりでひとつ。はなをひとりで通院させるのは心配だったけれど、ぶんが一緒にいてくれれば、それが何...
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【ふたりといた時間】第27話:食べてるのに、不安になる

はなは、今日もカリカリを元気に食べていた。おいしーのの袋を開ける音にも、いつものように反応する。小走りに駆けてきて、お皿の前でおすわりして、まるで「早くちょーだい」と言っているみたいに尻尾をふる。食いしん坊なのは、ずっと変わらない。カリカリ...
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【ふたりといた時間】第26話:違和感の足音

はなは窓辺に座って、外を眺めている。いつもの、スフィンクス座りで。でも——なぜだろう。今日のその姿が、ほんの少しだけ、気になった。🟩第3章:変化の気配(26~35話)夕ごはんの用意をしていると、ぶんが小さく鳴いて台所までやってきた。眠そうな...