短編小説 【ふたりといた時間】第10話:やっと、家族になった日 朝から、心に決めていた。今日はもう、絶対に外に出ない。誰とも会いたくないし、何もしたくない。仕事の疲れも、気疲れも、全部ブランケットにくるんでしまいたい。『ソファから一歩も動かない』っていう、ちょっとした宣言みたいなもの。それが今日の予定表... 2025.07.28 短編小説
短編小説 【ふたりといた時間】第9話:だっこはまだ、ちょっとこわい ぶんが初めてこの家にきた日のことを、思い出していた。押入れの奥、布団に半分うずもれるようにして、じっと身を固くしていた。あの時のぶんは、どこか「近づいてくるな」と言いたげで——私はただ静かに、息をひそめるしかなかった。けれど今ならわかる。あ... 2025.07.21 短編小説
温泉と自然 【散歩日記】宝光社。静けさを探して 「戸隠、行ってみようかな」仕事の合間にふと浮かんだ言葉だった。今週は土曜も出勤だから、半休を取った。ただ休むだけじゃ、心が休まらない。だから、山に行こうと思った。宝光社までの道中で思った事誰にも会わずに、静かな場所で、無心で歩く。それが今の... 2025.07.18 温泉と自然趣味
短編小説 【ふたりといた時間】第8話:お気に入りの窓辺 朝、バタバタと身支度をしている私の背中を、ふたりは見ていない。……というより、朝のバタバタしている私に、ふたりは全く興味がない。ぶんは朝4時からの巡回で力尽き、押入れの奥で爆睡中。はなはというと、ひとしきり甘えて満足したのか、こたつの掛け布... 2025.07.14 短編小説
短編小説 【ふたりといた時間】第7話:おそろいの首輪 あの日、たしか買い物ついでに寄ったホームセンターだった。おやつコーナーの隣に、ひっそり並んでいたペットグッズ。何気なく手に取ったのは、ピンクとグレーの小さな首輪だった。『おそろいにしたら、可愛いかもな…』レジに向かうときには、もうそのふたつ... 2025.07.07 短編小説
温泉と自然 【散歩日記】西福寺、何もないのに、すべてある場所 お昼ごろ。空は青く晴れていたけれど、湿気がすごかった。空気がぬるりと肌にまとわりついてきて、思わず「暑っ…」と声が漏れる。でも今日は、どうしても行きたかった。無性に――西福寺の空間に、もう一度浸りたかったのだ目的は御礼参り。でも、きっとそれ... 2025.07.04 温泉と自然趣味