#家族の物語

はなとぶんの時間

【ふたりといた時間】第30話:大丈夫と言えた夜

「長くはないかもしれない」亜希子さんが、はなとぶんを託してくれたとき、はなについてそう言ったのを、ふと思い出した。まさか、その言葉をこんな場面で思い出すなんて……。命の尊さを、まさかこんなかたちで理解するなんて——。その言葉がふいに脳裏をよ...
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【ふたりといた時間】第29話:「大丈夫」と言われても

病院で診てもらい、"点滴で様子を見ていきましょう"という言葉に、正直ホッとした。重たい不安のかたまりが、少しだけ軽くなったような気がしたからだ。だけど——それでも、心のどこかはざわついたままだった。"大丈夫ですよ"と先生は言ってくれた。でも...
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【ふたりといた時間】第28話:はじめての病院

車での移動なんて、はなとぶんにとっては引っ越し以来の大冒険だ。人間でいえば、満員電車で遠くの町へ旅するくらいの出来事かもしれない。はなとぶんは、ふたりでひとつ。はなをひとりで通院させるのは心配だったけれど、ぶんが一緒にいてくれれば、それが何...
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【ふたりといた時間】第27話:食べてるのに、不安になる

はなは、今日もカリカリを元気に食べていた。おいしーのの袋を開ける音にも、いつものように反応する。小走りに駆けてきて、お皿の前でおすわりして、まるで「早くちょーだい」と言っているみたいに尻尾をふる。食いしん坊なのは、ずっと変わらない。カリカリ...
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【ふたりといた時間】第26話:違和感の足音

はなは窓辺に座って、外を眺めている。いつもの、スフィンクス座りで。でも——なぜだろう。今日のその姿が、ほんの少しだけ、気になった。🟩第3章:変化の気配(26~35話)夕ごはんの用意をしていると、ぶんが小さく鳴いて台所までやってきた。眠そうな...
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【ふたりといた時間】特別版:でも、ふたりはちゃんとそこにいる

朝のリビングは、いつも通りだった。窓際から差し込む陽だまりの中で、はなはスフィンクス座りのまま、じっと外を眺めている。ぶんは、私の足元でのびをしていた。私はテーブルに新聞を広げて、湯気の立つマグカップをそっと置く。ぶんは、お決まりのように膝...
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【ふたりといた時間】第25話:特別な日じゃないけれど

誕生日は、よくわからない。実は、はなもぶんも、正確な年齢はわからない。亜希子さんから譲ってもらったとき、誕生日はいつ?なんて頭にはなかったのだ。だから、はなとぶんの年齢は、あくまで憶測のものだ。あとになって改めて「生まれた日、覚えてる?」と...
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【ふたりといた時間】第24話:すねるのも、愛のうち?

はなは、居心地のいい場所を見つける天才だった。押入れの奥、日だまりの窓辺、ソファのひじ掛けの上……『こんなところにいたの?』って思うような場所に、ぴたっとはまっている。でもその“お気に入りスポット”は、なぜかいつも、後からぶんに取られてしま...
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【ふたりといた時間】第23話:毛づくろいの順番、わたしは最後

猫って、毛づくろいをするときの“タイミング”があるらしい。おなかいっぱいになったときとか、気持ちを落ち着けたいときとか。それから、なにか“整えたい”ときにもするんだって。はなとぶんを見ていると、たしかにそんな気がする。ごはんを食べて満足した...
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【ふたりといた時間】第22話:午後のにゃんこタイム

お昼すぎ。少し遅めのお昼ごはんを終えて、ふぅ、と一息ついたころ。ふと、部屋の空気がゆっくりとやわらかくなっていくのを感じる。『……静かだなあ』そんなときはたいてい、ふたりがそれぞれの“お昼寝スポット”に収まっている。はなは、押し入れ。お気に...