【ふたりといた時間】最終話:「ふたりに教えてもらったこと」

はなとぶんの時間

はなとぶんが旅立ってから、どれくらいの時間が流れただろう。

季節は何度も巡った。
暑い夏も、寒い冬も過ぎていった。

 

だけど——

私は1日たりとも、ふたりを忘れたことがない。

断言できる。

 

朝、目が覚めたとき。

仕事へ向かうとき。

ごはんを食べるとき。

眠る前の静かな時間。

 

ふっとした瞬間に

はなを思い出す。
ぶんを思い出す。

それは特別なことじゃない。

まるで呼吸をするように、ごく自然なことだった。

 

こたつを見ると、はなの姿が浮かぶ。

押し入れを見ると、ぶんが丸くなっていた姿を思い出す。

猫じゃらしを見れば、
夢中になって飛びついていたふたりを思い出す。

 

そして今でも、ときどき思う。

『はな?』

『ぶん?』

振り返れば、そこにいるような気がして。

 

もちろん、そこには誰もいない。

だけど、不思議と寂しいだけではなかった。

なぜなら私は知ってしまったから。

 

亡くなるということは、
消えてしまうことではないのだと。

 

ふっとした景色の中に。

何気ない日常の中に。

今でも、ふたりの気配は残っている。

 

あの日抱きしめた温もりも。

鼻先をくっつけてきた感触も。

甘える声も。

怒った顔も。

全部、ちゃんと残っているから。

 

忘れていない。

いや——

忘れられるはずがない。

 

ふたりは現世から旅立っただけ。

私との時間まで、なくなったわけじゃない。

だから今でも、私は繋がっていると思っている。

 

部屋の中に。

夢の中に。

夕暮れが夜へ変わる静かな時間の中に。

 

ふたりは、ちゃんといるのだ。

私が覚えている限り。

私が名前を呼ぶ限り。

ふたりは生きている。

 

はな。

ぶん。

本当にありがとう。

出会ってくれてありがとう。

一緒にいてくれてありがとう。

私は、ふたりのおかげで幸せだった。

 

そして今も——

幸せだった時間に、支えられて生きている。

もし、いつかまた会える日が来たら。

そのときは、いつものように。

 

『ただいま』

 

って言うからね。

だからそれまで。

もう少しだけ、頑張ってみるよ。

 

ふたりに教えてもらったこと。

それは——

 

愛した存在は、

姿が見えなくなっても、

ずっと心の中で生き続けるということ。

 

そして——

ふたりといた時間は

これからもずっと

私の宝物です。

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